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2025年8月9日(土)しがぎん共創プログラム「第1回起業・経営塾」を開催しました

2025-09-25

2025年8月9日(土)、しがぎん共創プログラム『第1回起業・経営塾』が開催されましたので、その様子をお届けします。

滋賀銀行が主催する「しがぎん共創プログラム」は地域を担う人材や企業とともに、新たな価値を創造するプログラムです。26年目を迎える「起業・経営塾」、「しがぎんイノベーションアワード野の花賞」に加え、今年からは「企業共創枠」を新設。スタートアップや学生、地域企業が連携し、共に挑戦する場を提供します。

今年度の「しがぎん起業・経営塾」はプログラムを大幅にリニューアル。「社会的課題の解決・イノベーションにつながるビジネスの創出」を目指すという目的は継続しつつ、第1部は産官学金の連携を強化するトークセッション、第2部は共創の場を提供するワークショップとし、受講者参加型のプログラムとして2025年8月9日に開催しました。

しがぎん起業・経営塾の全体写真

第1回起業・経営塾レポート

第1部:トークセッション

第1部のトークセッションでは、甲賀市、日野町、守山市の3自治体の首長を迎え、アマゾンウェブサービスジャパンの松本肇子氏ファシリテーションのもと、「地域の課題とこれから」をテーマに、トークセッションを行いました。

甲賀市、日野町、守山市のトークセッションの様子

それぞれ異なる背景と規模を持つ自治体が、地域課題にどう向き合い、どのような未来像を描くのか。官民連携の在り方や長期的なビジョンについて、現場の視点から率直な議論が交わされました。

・甲賀市長 岩永裕貴氏
「ものづくりと多文化が共存するまちから、持続可能な官民連携モデルを」

甲賀市の取り組み

甲賀市は人口約8.7万人、そのうち約4,700人が外国籍住民という多様性豊かなまちです。新名神高速道路開通後は企業立地が進み、製造品出荷額は1兆1,000億円と県内1位。薬業をはじめ、歴史あるものづくりが地域経済を支えています。

岩永市長は「若者・子育て世代に選ばれるまちづくり」を掲げ、「暮らしの余白」をキーワードに、文化産業の活性化を進めています。

官民連携については、「公私の役割分担」を明確にし、民間の強みや創意が最大限発揮できる形を整えることが重要と強調され、「信頼できるコーディネーターに任せきる覚悟と、3〜5年単位での長期視点が成果につながる」と力強く語りました。

甲賀市長 岩永市長のトークセッション

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・日野町長 堀江和博氏
「目先の利益より100年後の信用」――小さな町から描く持続可能な未来

日野町の取り組み

人口約2万人の小規模自治体・日野町は、合併を行わず自然や商人文化を守り続けてきました。
生活圏はコンパクトで、自治区活動が盛んな地域です。

堀江町長は、高齢化を否定的に捉えず「人口増を前提とした仕組み」そのものの見直しを提案し、課題解決は行政に限らず、民間や地域住民など最適な主体が担うべきだと語ります。

官民共創のポイントは「価値観のすり合わせ」と「中長期的な視野と信頼関係」。実証実験は社会実装を前提に、最低3年伴走する方針をとっています。講演では日野商人の家訓「目先の利益より100年後の信用」を紹介し、100年後も日野町が日野町であり続けるために今できることを本気で考えると述べました。

日野町 堀江町長のトークセッション

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・守山市長 森中高史氏
「『実証実験のフィールド 守山』で、社会課題解決を加速」

守山市の取り組み

人口約8.6万人の守山市は、駅前市街地・田園ゾーン・湖岸リゾートの3エリアを持ち、京都・大阪へのアクセスの良さが特徴です。

森中市長は「担い手不足」を最大の課題に挙げ、新しい技術や考え方で補い、サービス向上を目指しています。その実践として、市全体を活用した「実証実験のフィールド 守山」を推進。入札不要・実績ゼロからでも参加できる制度で、市役所が全面的に伴走支援を行い、企業やスタートアップと共に社会実装を進めています。官民連携においては「共感」と「パッション」が不可欠であり、最終的には一緒にワクワクできるかどうかがパートナー選定の決め手になると語りました。さらに「挑戦と失敗を称賛する文化」を市民と共有し、挑戦しやすい風土を育てたいと強調しました。

守山市 森中市長のトークセッション

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盛り上がったところで惜しまれつつも終了の時間となり、第1部のファシリテーターである松本氏にそれぞれの内容を総括していただきました。

今回のトークセッションでは、地域課題の解決に向けた官民連携の在り方について、3名の首長から多様な視点が語られました。共通していたのは、「官民連携はゴールではなく手段である」という認識と、多様性や人の流動性を活かす姿勢です。

岩永市長は、行政がすべてを担うのではなく、信頼できる民間に「任せきる」ことの重要性を強調。
堀江町長は、歴史を受け継ぎつつも、デジタルなど新しいことを柔軟に取り入れ、長期的な信頼を育む「パブリックマインド」の必要性を語りました。
森中市長は、共感やパッションを起点に、変化を恐れず挑戦し、柔軟にやり方を見直す姿勢が、官民が一体となって新しい価値を築く鍵になると述べました。

多様な立場が交わり、信頼と共感を土台にした連携こそが、持続可能な地域づくりの原動力であることが再確認されました。

第2部:共創ワークショップ

トークセッションで帯びた熱気をそのままに、第2部では「企業共創枠」に採択された企業のビジネスアイデアを題材に、参加者全員で共創プランを考えるワークショップが行われました。ファシリテーターを務めたのは、一般社団法人co.shigaの中野龍馬氏。

共創ワークショップを説明する中野氏

今年度の企業共創枠(スタートアップ/事業会社部門)では、以下の2者が採択され、それぞれの事業プランをプレゼンしていただきました。

・平和堂×sukkiri.kurashi
【テーマ提供企業】 
株式会社 平和堂
【提供テーマ】
「”次世代ライフスタイル共創拠点”衣食住サービスの連携による地域コミュニティの活性化」
【採択/発表企業】
 sukkiri.kurashi/古濱 優 氏

整理収納アドバイザーである古濱さんは、SNSフォロワー7.4万人を有し、個人宅訪問や企業タイアップ、講演、学校・PTAでの出前授業など幅広い活動を展開しています。

【事業プラン】
平和堂と共創し、子育て世帯やシニアを対象に「片づけから始まる、心と暮らしの小さな一歩」をテーマとしたセミナーを企画。防災・防犯、食品ロス削減、家事シェア促進など、整理収納を切り口に地域のつながりとQOL向上を目指します。

今回、このセミナーの展開方法について「どんなテーマ設定が参加意欲を高めるか」「どの地域・会場で開催すると効果的か」といった議題が共有され、活発な意見交換が行われました。

平和堂×sukkiri.kurashiの取り組み

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・滋賀銀行×杢兵衛造船所
【テーマ提供企業】 
株式会社 滋賀銀行
【提供テーマ】
「滋賀の魅力を地域外へ届け、”地域外からの売上を増やす”ビジネスの創出」
【採択/発表企業】
株式会社 杢兵衛造船所/仲野 智之氏

滋賀県大津市堅田の創業150年以上の県内唯一の造船所

【事業プラン】
船を単なる移動手段ではなく、地域と人をつなぐ“かけはし”とする新しい観光モデルです。琵琶湖周辺の観光地を“宝石”に見立てて“波”のようにつなぎ、船に乗ること自体に価値を持たせ、訪問地での食や景観、特産品体験までを含めた観光をデザインします。

今年4月に就航したLAGOクルーズを基盤に、既に港同士をつなぐ運航を開始しており、今後は
「なぜ船に乗るのか」「行った先で何ができるのか」という価値付けを強化する方針です。

この回では、この観光モデルの実現に向けて「船で訪れた先での過ごし方」「地域との継続的な関係構築の方法」などが議題として挙げられました。

滋賀銀行×杢兵衛造船所の取り組み

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参加者は平和堂チーム(sukkiri.kurashiプラン)と滋賀銀行チーム(杢兵衛造船所プラン)に分かれ、以下の手順で議論を展開しました。

1 2者の発表を聞き「自分にできること」を付箋に書き出す
2 付箋を模造紙に並べて似たアイデアをグループで分類
3 それぞれのできることを掛け合わせてチームごとに共創プランを作成
4 全体発表

各テーブルには企業、自治体、大学、金融機関、学生など多様な立場の人々が集まり、産官学金民が交わる場となりました。多様な立場から意見を出し合うことで、課題解決の新しい視点やアクションが次々と生まれ、事業化に向けた課題や改善案が活発に議論されました。

ワークショップの様子

平和堂の共創プランを考えるグループでは、子育て世帯や高齢世帯が安心して参加できるセミナーの開催を起点に、参加者の声をデータ化し、地域のニーズに即した商品開発やサービスにつなげるプランが描かれました。
セミナーそのものの集客に加え、データを活用した収益モデルや地域還元の仕組みが構想され、生活者の視点と企業の実行力を両立させる共創の可能性が示されました。

ワークショップ後の発表

滋賀銀行の共創プランを考えるグループでは、船を「ただの移動手段」ではなく「体験そのもの」として位置づける発想が広がりました。
観光資源との連携を前提に、船上での食事やワークショップなどを組み合わせることで「移動すること自体が目的になる観光プラン」が描かれ、金融の知見と学生の自由な発想が交差することで、新しい観光モデルの実現像が浮かび上がりました。

ワークショップ後の発表

最後に、企業共創枠のテーマ提出企業である株式会社平和堂の金田マネージャーと、滋賀銀行の古藤部長より、今後はじまる両プロジェクトの推進と共創への意気込みのメッセージをいただき、盛況のもとワークショップは幕を閉じました。

平和堂の金田マネージャーによる総評

まとめ

今回の第1回しがぎん起業・経営塾では、第1部で多様な立場から地域課題の解決に向けた官民連携による明るい未来を語り合い、第2部で具体的なプロジェクトを題材に参加者全員がアイデアを出し合うという、学びから実践を通した「共創を体感する」1日となりました。

ワークショップの様子

トークセッションで得られた知見とワークショップで生まれたアイデアが掛け合わさることで、産官学金が連携した「共創の力」が形になりはじめています。

この議論と交流を起点に、滋賀県内外で新たな価値創造の波がさらに広がることを期待します。

第2回起業・経営塾のご案内

次回は11月22日(土)にしがぎんホールにて開催いたします。

第1部では「地方における学生起業の課題とこれから」をテーマに、滋賀大学・立命館大学・龍谷大学の産学連携・起業支援に関係する担当者が登壇し、学生起業を取り巻く現状や課題、地域との連携による可能性を議論します。

第2部では「企業共創枠 学生部門」の採択アイデアを題材にした共創ワークショップを実施。学生が主体となりアイデアを提案し、参加者全員で事業化や社会実装に向けたブラッシュアップを行います。

次回も、レポートをお届けしますので、学びと交流を通じて新たな価値を創り出す場として、多くのみなさまのご参加をお待ちしています。

一般社団法人co.shiga 物部

▽「しがぎん共創プログラム」特設サイト
https://www.shigagin.com/lp/coCreation/