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2025年11月22日(土)しがぎん共創プログラム「第2回起業・経営塾」を開催しました
2025-12-16
2025年11月22日(土)、しがぎん共創プログラム『第2回起業・経営塾』が開催されましたので、その様子をお届けします。
滋賀銀行が主催する「しがぎん共創プログラム」は地域を担う人材や企業とともに、新たな価値を創造するプログラムです。26年目を迎える「起業・経営塾」、「しがぎんイノベーションアワード野の花賞」に加え、今年からは「企業共創枠」を新設。スタートアップや学生、地域企業が連携し、共に挑戦する場を提供します。
8月に開催した第1回に続き「社会的課題の解決・イノベーションにつながるビジネスの創出」を目指すという目的のもと、11月22日(土)は、第1部で「地方×学生起業の課題とこれから」と題してのトークセッション、第2部で「共創の場を提供するワークショップ」を開催しました。
第2回起業・経営塾レポート
第1部:トークセッション
第1部のトークセッションでは、滋賀大学、立命館大学、龍谷大学の3大学で起業支援やアントレプレナーシップ教育等に関わる先生方を迎え、アマゾンウェブサービスジャパンの松本肇子氏のファシリテーションのもと、地域を担う次世代人材の育成とアントレプレナーシップ教育のあり方等についてトークセッションを行いました。
学生を起点に、大学・企業・地域の三者がどのように連携し、新しい価値を生み出していくのか。各大学の取り組みとともに、滋賀に広がる学びのネットワークエコシステムをどのように育んでいくかについて、活発な意見交換が行われました。
・滋賀大学経済学部准教授/アントレプレナーシップセンター長 山下 悠 氏
「学生起業を育てるのではなく、挑戦できる精神を育てる組織へ」
2023年4月に設立された滋賀大学アントレプレナーシップセンターは、学生起業を支援する組織ではなく、挑戦する精神そのものを育む教育組織として位置づけられています。
起業経験者による実践的な講義(アントレプレナーシップⅠ・Ⅱ)や、滋賀県信用保証協会・監査法人トーマツとの連携科目などを通じて、実社会と学びをつなぐプログラムを展開。公開講座、大学発ベンチャー認定制度、起業相談会など、学生が「動きながら考える」ための入り口も多層的に整備されています。
山下氏は「学生起業はあくまで結果であり、目的ではない」と強調し、地域や社会への貢献を見据えながら挑戦を繰り返すアントレ的人材の育成こそ大学の使命であると語りました。
クロストークでは「学生が挑戦を怖がる最大の理由は、失敗経験の少なさ」であると指摘。失敗しても大丈夫な場所を大学が継続的に提供し、挑戦の総量を増やす必要があると述べました。
また、学生にはビジネスモデル以前に「社会に触れ、自分の軸を持つ経験が圧倒的に不足している」とし、地域での実践機会の拡充が鍵になると語りました。
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・立命館大学 経営学部准教授 林 永周 氏
「小学生から大学院まで、社会起業家をシームレスに育てる大学へ」
立命館大学の起業・事業化推進室は、研究・教育・投資・コミュニティ形成を一体的に推進する、全国的にも稀有な組織です。
探究授業やリーダーズプログラムにはじまり、大学ではビジネスコンテスト、インキュベーション、社会連携ワークショップ、そして起業支援ファンド(RSIF)までつながる挑戦の導線が連続的に設計されています。
さらに、OIC CONNECT や ROCKET PITCH NIGHT など、外部機関と連携した交流コミュニティが展開され、組織や世代を超えて挑戦が集まる環境が形成されています。林氏は「挑戦者が集い、磨かれる場所を大学が持つことは、社会への価値創出につながる」と語り、大学を拠点とした広域的なスタートアップ・エコシステムの形成を目指す姿勢を示しました。
クロストークでは「起業が失敗する最大の理由は、顧客がいないこと」と述べ、マーケティング起点の発想を学生に徹底する重要性を強調。
特に「好きなことを形にする」のではなく「誰の、どんな課題を解決するのか」という視点が不可欠だと語りました。
また、立命館には挑戦者が自然と集まる文化があり、それを大学としてどう維持し、地域につなぐかが今後の鍵になると語りました。
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・龍谷大学 政策学部教授/副学長 深尾 昌峰 氏
「仏教SDGsと“自省利他”を軸に、社会変革を担う人材を育てる」
深尾氏は、龍谷大学が掲げる「仏教SDGs」という理念を紹介。「誰一人取り残さない」という理念を仏教の精神と重ね合わせ、行動哲学である「自省利他」を教育の中心に据えています。
ユヌス・ソーシャルビジネスリサーチセンター(YSBRC)を軸として、ソーシャルビジネスの実装、創業支援ブース“TREP”、合宿型プログラム、フィールドワーク、学生主導のコンテストなど、多様な実践機会が整備されています。
深尾氏は「大学は起業家を育てる場所である前に、人と社会の価値をつなぎ直す場である」
と述べ、地域課題の現場で学びながら社会実装を進める挑戦する文化の重要性を強調しました。
クロストークでは「地域が人を育て、人が地域を育てる。その循環こそ教育の本質」と語り、実社会の中で学生が“必要とされる実感”を持つことが、最も強い学びにつながると述べました。
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セッションの締めくくりとして、アマゾンウェブサービスジャパン 松本氏より総括が述べられました。
アマゾンウェブサービスジャパン 自身がスタートアップとして生まれ、現場からのアイデアを起点に事業を展開してきた歴史を踏まえつつ、松本氏は「挑戦が挑戦を呼ぶ環境づくり」の重要性を強調しました。
3大学の取り組みには、
・挑戦の入口が多様であること
・動きながら学べるフィールドが豊富であること
・学外のプレイヤーと接続する仕組みが存在すること
という共通点が見られ、これらが滋賀のアントレプレナーシップ文化の厚みにつながっているという見解。
また、大学・企業・自治体・金融機関がひとつの循環の中で挑戦を支えることで「挑戦の成功率ではなく、挑戦の総量が増える地域へ」と変化していく可能性にも言及しました。
松本氏は「小さなアイデアを尊重し、動きながら形にできる環境を整えることが、学生の未来と地域の未来をひらく鍵になる」と締めくくり、会場は大きな拍手に包まれました。
第2部:共創ワークショップ
トークセッションで帯びた熱気をそのままに、第2部では「企業共創枠 学生部門」に採択された学生のビジネスアイデアを題材に、参加者全員で共創プランを考えるワークショップが行われました。ファシリテーターを務めたのは、一般社団法人co.shigaの中野龍馬氏。
今年度の企業共創枠(学生部門)では、以下の2組が採択され、それぞれの事業プランをプレゼンしていただきました。
・平和堂×滋賀医科大学/大坪 琉奈さん
【テーマ提供企業】
株式会社 平和堂
【提供テーマ】
「地域経済の活性化と"健康"の好循環創出」
【採択/発表者】
滋賀医科大学 大坪 琉奈 さん
滋賀医科大学の大坪さんは、学生団体として病院祭や防災体験イベントを企画し、医療を身近にする活動を県内で展開。
【事業プラン】
"びわふぇす"は、病院祭や防災体験イベントを通じて「医療を身近にする」活動を行う医療系学生発のプロジェクトです。これまで避難所体験プログラムや病院祭など、地域と実践的に関わる場をつくってきました。
今回は平和堂を地域の生活拠点として活かし、健康測定・模擬診察・AED体験など、買い物ついでに予防・健康づくりを体験できる「日常型ミニ病院祭」を店舗内外で実施する構想が示されました。
この回では、この健康モデルの実現に向けて「どのような健康テーマが地域ニーズを高めるか」「どの店舗で展開すると効果的か」などが議題として挙げられました。
・滋賀銀行×立命館大学/藤井 愛菜さん
【テーマ提供企業】
株式会社 滋賀銀行
【提供テーマ】
「滋賀の魅力を地域外へ届け、”地域外からの売上を増やす“ビジネスの創出」
【採択/発表者】
立命館大学 藤井 愛菜さん
立命館大学の藤井さんは、滋賀の魅力発信や観光体験づくりに関心を持ち、地域課題と企業ニーズの接点を探る取り組みを提案しました。
【事業プラン】
“SHIGA LINK”は、地域企業の福利厚生を「滋賀の特産品や体験」と結びつけ、社員のWell-being向上と地域経済循環を同時に実現するプラットフォームです。滋賀県内の宿泊・飲食・伝統工芸などが福利厚生サービスとして登録され、企業は社員向けに“選べる滋賀体験”を提供できるモデルが構想されています。
企業および従業員のWell-being向上と地方の魅力発信を両立させるため、近江商人の「三方よし」を基盤に、サービス提供企業・利用企業・地域がともに利益を得る設計が示されました。
この回では、このモデルの実現に向けて「どんな体験が福利厚生として選ばれやすいか」「地域事業者との継続的な連携をどう築くか」などが議題として挙げられました。
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参加者は平和堂チーム(びわふぇすプラン)と滋賀銀行チーム(SHIGA LINKプラン)に分かれ、以下の手順で議論を展開しました。
1.2組の発表を聞き「自分にできること」を付箋に書き出す
2.付箋を模造紙に並べて似たアイデアをグループで分類
3.それぞれのできることを掛け合わせてチームごとに共創プランを作成
4.全体発表
各テーブルには企業、自治体、大学、金融機関、学生など多様な立場の人々が集まり、産官学金民が交わる場となりました。多様な立場から意見を出し合うことで、課題解決の新しい視点やアクションが次々と生まれ、事業化に向けた課題や改善案が活発に議論されました。
平和堂チーム(びわふぇすプラン)では「平和堂は地域の生活動線の中心にある」という特性を起点に、日常のハブとしての活用可能性が議論されました。
議論では、店内や周辺施設を活かし、医療機関や防災体験の連携を含むイベント企画が複数のテーブルで検討されました。
特に、店内導線を活かした医療・健康・防災イベントや、平和堂守山店などの特徴的な店舗資源を活かした地域イベント、地域住民が安心して参加できる「日常の延長線上」にある企画といった方向性が共通して描かれました。
「平和堂はどこにでもある」というイメージを活かした、地域の拠点として人が集まり、つながりが生まれる場としての可能性が強く感じられました。
滋賀銀行チーム(SHIGA LINKプラン)では、SHIGA LINKが掲げる「地域を元気にする福利厚生」をテーマに、社員と家族が本当に欲しい福利厚生とは何かを起点に議論が進むグループが多く見られました。
特に注目の高かった点は、滋賀ならではの体験価値と食を組み合わせた福利厚生プランの可能性です。
発表を行ったグループでは、以下のような内容が議論されました。
・花火大会に合わせ、社員とその家族が船上から花火を鑑賞できる特別クルーズ
・船上で、地元食材を活かした食事やワインを楽しめる企画
福利厚生の導入企業側の視点としても、社員同士の交流促進や地域サービスとの連携による三方よしの仕組みとして期待が寄せられている様子でした。
最後に、企業共創枠のテーマ提出企業である株式会社平和堂の吉原氏と、滋賀銀行の吉岡氏より、今後はじまる両プロジェクトの推進と共創への意気込みのメッセージをいただきました。
■株式会社平和堂 吉原 朱音 氏
平和堂の吉原氏からは、今回のプログラムへの参加が「地域の健康」を重視する同社の方針と深く重なるものであり、多様な参加者と共に議論できたことへの喜びが語られました。
平和堂は 「商品を売るだけの会社」ではなく「店に行けば誰かに会える」「従業員と話すと元気になる」といった、地域住民の心身の健康を支える存在としての役割を大切にしていると述べました。
今回のワークショップを通じて得られた意見を今後の取り組みに活かし、社内や地域と共にプランをさらに磨いていきたいと締めくくりました。
■滋賀銀行 吉岡 裕子 氏
滋賀銀行の吉岡氏は、発表者への労いを述べたうえで、同社が掲げる「『三方よし』で地域を幸せにする」というパーパスと藤井さんのアイデアが強く重なるとコメントしました。
ワークショップでは非常に活発な議論が交わされ、「銀行だけでは実現できないことも、多様な立場が集まれば必ず乗り越えられる」と、産官学金民による連携への期待が語られました。
地域をともに盛り上げていきたいという力強いメッセージで、会場を温かく締めくくりました。
まとめ
今回の起業・経営塾では、第1部のトークセッション、第2部のワークショップを通じて、大学・企業・行政・金融機関・学生が同じ目線で語り合い、“挑戦の総量を増やす地域づくり” という大きなテーマが会場全体に共有されました。
AWS 松本氏は最後の総括で、学生の想いや企業の原動力、大学の使命が一つの場に集まったことそのものを「大きな波になった」と表現されました。
単なる学びの場としてではなく「ここに来ると元気が出る」「挑戦してみたくなる」──そんな空気が立ち上がる瞬間を、参加者全員が共有できたことが、今回の最も大きな成果だったのかもしれません。
第1部では、学生の挑戦をどう支えるか、地域と大学をどうつなぐかという“思想”が語られ、第2部では、参加者自身が手を動かしながら“実践”としての共創を描きました。
その両方がつながることで、今日の対話は単なるイベントで終わらず、これから始まる実証や新しいプロジェクトの土台として確かな意味を持つことになります。
松本氏の言葉を借りれば、ここで生まれたアイデアやつながりは、必ず次の挑戦へと受け渡され「滋賀に大きな波をつくる力」になっていくはずです。
第3回起業・経営塾(野の花賞最終選考会)のご案内
次回は2026年2月14日(土)に、しがぎんホールにて開催いたします。
第3回では「野の花賞」の最終選考会・贈呈式に加え、企業共創枠のスタートアップ / 事業会社部門で採択されたsukkiri.kurashiの古濱氏、杢兵衛造船所の仲野氏、学生部門で採択された滋賀医科大学の大坪氏、立命館大学の藤井氏ら4組の進捗・成果発表も行います。
この一年間で育まれてきた挑戦や学びが、どのように社会実装へ向かっていくのか、共創のプロセスが一望できる、節目の回となります。
次回もレポートをお届けし、学びと交流を通じた新たな価値創出していきます。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。
一般社団法人co.shiga 物部
▽「しがぎん共創プログラム」特設サイト
https://www.shigagin.com/lp/coCreation/